『虐殺器官』伊藤計劃 読了

比較的一気に読みおわりました。
新年明けて晴れやかな気持ちで読み始めるような物語でもないだろうとは思ったものの、思っただけで特に気後れなどもありませんでした。
歳をとってそれくらい鈍感になってしまったのだなあと思いました。冗談です。

もうたぶん10年以上前に、「すごいモノが出てきたぜ!」みたいに話題になってましたが、若かりしワタシはタイトルに気圧され手に取ることはありませんでした。その後作者の方が早逝されたことが話題となったこともありましたが、やはり手に取ることはありませんでした。「SFってあんまり好かんのよね」みたいに斜に構えてましたね。何様。
それがこの度なぜ読むことになったかというと、kindleセールで勢いで購入してたからです。まったく、読者の風上にも置けないと思います。

描写がなかなかハードだし設定も若干ぶっ飛んでいますが(主観です)、十分すぎるほどのリアリティを感じるのは、ディテール描写が冴え渡っているからでしょうか。神は細部に宿る。ここまでくると、ラストにオチなんて要らないから!!なんて思いながら読めてしまいます。
読み終わった後のカタルシスもなかなかのもので、なんかこの作家の作品とは相性が良い気がします。もっといっぱい小説書いてほしかったですね。そして未読が残っているのはとてもうれしいですね。

最近読み終わった本の感想を書く回

最近(少なくとも今年)に読み終わった小説の中から覚えているやつについて感想を書く回。そして、アフィリエイトリンクを貼りつけて、あわよくば紹介料をいただきたいという裏テーマもあります。(開き直り)

涼宮ハルヒの直観 谷川 流

短編集だからというわけではないけど、途中で別の本を読んだりしてて、読み始めてから読み終わるまでの時間で言うと数ヶ月とかありそう。この手の本でも一気読みしなくなったのは、歳のせいと思わなくもないです。
読んだ時に得られる感情としては、もはやノスタルジーですね。初めて読んだ時の感動を求めながらも、読む前からその望みは果たされないと分かりながらも、でも読んじゃうよねー、というのもシリーズものの醍醐味でしょうか。もしくはこれも歳のせい?
内容としては、SFよりかはミステリー寄りでした。いつもより動きが少ないですが、安定の面白さでした。(こなみ)

君たちは絶滅危惧種なのか? 森 博嗣

森博嗣さんが描く、今から数百年先の世界を描くシリーズの、何作目かな…。相変わらず多作ですね。
タラタラと説明せずに、適度なボリュームの地の文、そしてインテリ感あふれる会話を以って、その世界観を少しずつ構築していく感じが流石だと思いました。
個人的には、この世界をユートピアと見るかディストピアと見るか、というテーマでグッと考え込んでしまいました。
そして安定の面白さでした(こなみ)

探偵伯爵と僕 森 博嗣

森博嗣さんの著作は余す所なく読んでいるかと思いきや、読んだ気になってて実は未読、というのもたまにはあります。
本書は子供向けのミステリーなのかな。小学生が日記を書いている、という設定もあって、平易な文章で書かれていて読みやすいです。
そして大人も(大人の方が?)楽しめる内容でもあると思います。

薬屋のひとりごと 日向夏

マンガワンというアプリで漫画版読めますね。それがとても面白いのです。
原作がWEB小説だとは知っていて、いつか読みたいなと思っていたところにKindleセールで安くなっていて勢い購入しました。
舞台が中国の後宮ということで、なかなか馴染みがないので読み始めるハードルは高いのですが、読み始めると一気に読み終わりました。ボリュームも適度にあって内容も濃く、とても充実した読書でした。
主人公のキャラ立ち具合がなかなかサイコーです。このキャラを発明した時点で「勝ち」じゃないかなと思います。
続きもいっぱいあるので順番に読んでいきたいです。(こなみ)

掟上今日子の備忘録 西尾 維新

ガッキー結婚しちゃいましたね。
ずっと読みたいなと思っていたところにガッキー結婚というニュース、ガッキー結婚しちゃった以上、今日子さんとガッキーをダブらせて読むことはするまい、という固い決意とともに読み始めました。しかし無理でした。
このシリーズも何冊か続いています。本書は安定の面白さでしたし、次巻も読みます。(こなみ)

砂漠 伊坂 幸太郎

伊坂幸太郎さんの小説も毎回キャラが立っていると思います。身の周りに居そうでいない、絶妙な設定だなあと毎回思います。
大学生の青春を、様々な出来事とともに描くのですが、一つ一つの場面がすべてクライマックスかのような錯覚を味あわせてくれます。ページを捲るのが止まりませんね。
伊坂幸太郎さんの著作は毎度そんなところがあると思います。とても面白く、伊坂幸太郎さんは未読が多いので、次何読もうかなと考えるのも楽しいですね。(こなみ)

NHK 『100分de名著 ボーヴォワール「老い」』を見終わった

これから先はもうどう頑張ったところで超高齢化社会待ったなしで、道を歩けば老人ばかりな日常は当然訪れ、誰もが皆、当事者オブ当事者ズなのは間違いない訳です。
しかし、これまた当然のことながら、ある日いきなり年寄りが大量に現れるわけではなくて、時が経つごとに緩やかに、しかし確実に目に見えるレベルの速度で増えていくことでしょう。同様に、ワタシだってある日いきなり老人になるわけではなくて、日々過ごしていたらいつの間にかそのボーダーラインを超えていた、的なことを思う日がいつか来てしまうわけです。
人生山あり谷ありなんて言いますが、では老いていく過程は下り坂なのでしょうか。だとすれば、人生が上り坂から下り坂に転じるのはいったいいつなのでしょう。
いやむしろそもそも、下り坂というものが固定観念であり、本来はそのような悲観的なイメージに支配されるべきではないのかもしれません。悲観的なイメージに支配されているとすれば、それは高度経済成長社会が残したある意味「呪い」とも言えるのでしょうか。であるならば、まだ我々は、『成長継続間違いなし』な社会から『成長止まって緩やかかつ確実にボリュームダウン』な社会への舵きりを終えていないということになります。
でも難しいですね。どうしても、『老い→死≒収束していく、狭まっていく、自由がなくなっていく、しりすぼみ』なイメージはあって、そこからの脱却は多分無理で、受け入れた上で充実させることが求められる気がします。

というようなことを考えながら見終わりました、『100分de名著 ボーヴォワール「老い」』。普遍的なテーマで、かつ先進国ではボリュームゾーンなはずですが、イマイチ語りたがらない印象がありますね。そのような内容をズバッと語ってくれる本番組(本書)は、爽快でもあり不快でもあり。不快に思うのは自分が当事者であるという意識の表れでしょう。ワタシもまた、舵きり上手くできていないということですね。
たいへん面白く、勉強になりました。こなみ。

あと、最近読んだ『人口現象社会のデザイン』(広井良典)を思い出さずにはおれなかった。最終の第4夜は特に。

『ルックバック』(藤本タツキ)が凄かった

ネット空間にあらゆる意味の「凄い」という感想が溢れていて、何をいまさらいわんやという感じですが、本当に凄かった。元々凄い漫画を描く人だと思ってましたけど、今回も凄かった。いろんな感想読みたい人や、何が凄いのかを言葉にして欲しい人は、検索してゴロゴロ出てくる感想考察の類を読み漁りましょう。共感納得なものが絶対いくつかはあるのでは。
ワタシには感想考察を述べるスキルがないので、ここでは「凄い」としか言えません。凄かった。

『小生物語』(乙一)を再読した

ブログを書くにあたって一人称を何にするかについては、万国共通の悩みではないでしょうか。甘酸っぱい青春模様のように、誰もが一度は通る道だと思います。甘酸っぱい青春を味わわなかった人よりは、一人称で悩む人の数の方が多いかもしれません。この比較結果には何の根拠もなく、比較することには何の意味もありません。たまたまこの文章を読んでしまった方におかれましては、同情を禁じ得ません。もったいない時間を過ごしてしまいましたね。なんとか意味ある時間に昇華するために、自分の一人称を何とするかで小一時間悩んでみてください。その結果については、責任を負いません。

かれこれ数ヶ月前になりますが、本ブログを開始するにあたっては、ワタシもずいぶん悩みました。いくつもの候補が思い浮かびましたが、すべて彗星のようにはかなく一瞬の存在を燃やし消えていきました。いくつもの候補の中には当然『小生』もありました。自らを『小生』と名乗ることを夢見ること、それは古今東西老若男女、すべてのブロガーが一度は通る道と言っても、きっと過言でありましょう。まあでもみんな思いつくんじゃないかしら。なんかネタっぽいし。一撃必殺、一点突破、ヒットアンドアウェイ、力それはパワー、そんな考えのもと一瞬の命を燃やし尽くすようなブログをやるなら、『小生』なる一人称で運営するのも悪くないと思います。しかしワタシにはそのような力量はなく、ブログの方針については、太く短くなのか細く長くなのかを決めることもなく始めてしまいましたので、一人称でそんな冒険をする度胸などなく現在に至ります。
『小生』…ああなんたる甘酸っぱい響き…。ワタシに相応の力が備わったら、是非とも『小生』としてもう一度やり直したいと思います。ここまで書いたことは半分以上ウソです。読んで信じた方、無駄な時間を過ごしてしまいましたね。

乙一さんの『小生物語』は、乙一さんが一人称を『小生』と名乗り綴ったWEB日記の書籍版です。世に出たのがもう20年くらいまえで、世に出てすぐに読んだのを覚えています。
日記を書いている『小生』は乙一さんであってかつ空想上の人物でもあり、日記の内容は乙一さんの身の周りに起こった出来事を綴っていて、かつ空想上の出来事も綴っています。読むともう本当に、夢か現か、リアルかホラーかファンタジーか、『ようこんな事思いつくなあ』という感想を抱きました。
『小生』と人称するからにはやはり全体としてこう、なんというか、文豪っぽいというか、ひと昔前っぽいというか、偉そうというか…しかし書かれている内容はなんか『小者』感があふれていて親しみを覚えることも多く、そのギャップに萌えます。このブログで初めて『萌え』なる表現を用いました。後悔はありません。

ワタシはとにかくこの本大好きです。電子書籍版がないのが残念でなりません。
ブログで日記書いてて、別に目指すべきものがあるとは思ってませんでしたが、『小生物語』を再読した今となっては、この『小生物語』こそこのブログの目指すべき形ではないかと思えます。別の本を読んだら考えが変わりますが、別の本を読むまでは真実なのでここに書いてみました。後悔はありません。

森博嗣さんのエッセイを読んだ

森博嗣さんのエッセイで過去読んだことごあるのは、初期のWEB日記のシリーズをWEBで読んでいたのと、大学生の質問にズバズバ答えていくやつ(これもかなり初期の方だった)くらいです。小説にくらべたら全然読んでいません。
森博嗣さんのエッセイは、小説に負けず劣らずえげつないスピードで刊行され続けているようです。最近は新書と呼ばれているサイズの本も多くだされていますね。
読みたいなあと思いながら、どうしても小説に比べたら食指が動かずいたのですが、最近2冊ほど読みました。
『科学的とはどういう意味か』と『作家の収支』です。

どちらもタイトルそのまんまの内容ですね。当たり前か。
どちらもとても面白くて、比較的短期間で一気に読んでしまいました。

科学的とはどういう意味か

これはもう、理系の人間としてウンウン頷きながら読みました。一般論を書いておられるだけにも思えるのですが、一般論をここまで説得力ある文章で書けるって凄いです。科学的な(専門的な)例とか科学的な言い回しとかはほとんどないにもかかわらず、科学的とはどういう意味かを分かりやすく語っているように感じました。きっと理系の人間じゃなくてもウンウン頷きながら読むことができるのではないでしょうか。刊行されたのはもう8年も前です。今読むと昨今のコロナ感染症のことを思いながら読まざるを得ませんね。

作家の収支

森博嗣さんの過去の作品の売れ行きに関する考察になるのでしょうか。刊行し、売れ行きをみて、考察し、モデルを構築し、仮説をたてて、次のアクションを起こす、そしてまた売れ行きを確認し、…ということを軽くシレッとやっておられて、なかなか読み応えあります。シレッと書いておられるので大したことをやってないように読めてしまうのですが、冷静に考えてとても真似のできることではありません。ただ、考え方とか、問題に立ち向かうスタンスなどは真似たいと思わせてくれますね。
しかしまあ、夢のある内容だと思います。

両方ともとても読ませる内容です。着眼点が独特というのは大前提で、かつ、そこからの展開からうける印象は『圧倒的なロジカル感』です。そこにしっかりとしたロジックがあるから、読んでいるだけで心地よく、言い切られると説得力を半端なく感じるのです。
あんまり数を読んでいないので想像ですが、森博嗣さんの他のエッセイもきっと同じなのでしょう。これはもう、どんどん読んでいこうと思いました。

テレビドラマ『死との約束』を見た

海外翻訳ミステリーというやつを読んでいたときもありました。今でもたまに読みたくなることはあるものの、読書自体の数が減ってきていますので、なかなかそこまで手が届きません。出てくる人の名前はカタカナだし、翻訳物は地の文にクセがあるしで、日本の作品と比べるとファンタジーを読んでる感覚になります。そこが翻訳物の良いところだと思います。
数ある有名作品の中で何を読んで何を読んでいないかはもうわからなくなってしまいましたが、アガサ・クリスティ、エラリィ・クイーン、あたりはまあまあの数を読んだ気もします。最近だとケイ・スカーペッタのシリーズ(たぶん最近ではない)とかでしょうか。「羊たちの沈黙」のシリーズも良かったです。レクター博士サイコー。

アガサ・クリスティの作品に出てくる人は、犯人も探偵もモブも皆んなハイソな感じでした。悪くいえば偉そう。ポアロなんて特に。でも礼儀正しいしお上品だから許せます。
出てくる館とか列車とかも、軒並み高級です。その気になればタイトルもなんかお上品に感じることができます。

三谷幸喜アガサ・クリスティ映像化第3弾『死との約束』を見ました。毎回そうなのですが、ワタシが感じるアガサ・クリスティ作品のイメージを見事に再現してくれていると思いました。舞台は日本だし、出てくる人は日本人なのに。
原作も知ってる者としての安心感はすごいです。あと、野村萬斎さんの名探偵・勝呂武尊があいかわらずサイコーです。
次はまた3年後でしょうか。ずっと続いて欲しいものです。原作の作品数はすごいあることだし。