『小生物語』(乙一)を再読した

ブログを書くにあたって一人称を何にするかについては、万国共通の悩みではないでしょうか。甘酸っぱい青春模様のように、誰もが一度は通る道だと思います。甘酸っぱい青春を味わわなかった人よりは、一人称で悩む人の数の方が多いかもしれません。この比較結果には何の根拠もなく、比較することには何の意味もありません。たまたまこの文章を読んでしまった方におかれましては、同情を禁じ得ません。もったいない時間を過ごしてしまいましたね。なんとか意味ある時間に昇華するために、自分の一人称を何とするかで小一時間悩んでみてください。その結果については、責任を負いません。

かれこれ数ヶ月前になりますが、本ブログを開始するにあたっては、ワタシもずいぶん悩みました。いくつもの候補が思い浮かびましたが、すべて彗星のようにはかなく一瞬の存在を燃やし消えていきました。いくつもの候補の中には当然『小生』もありました。自らを『小生』と名乗ることを夢見ること、それは古今東西老若男女、すべてのブロガーが一度は通る道と言っても、きっと過言でありましょう。まあでもみんな思いつくんじゃないかしら。なんかネタっぽいし。一撃必殺、一点突破、ヒットアンドアウェイ、力それはパワー、そんな考えのもと一瞬の命を燃やし尽くすようなブログをやるなら、『小生』なる一人称で運営するのも悪くないと思います。しかしワタシにはそのような力量はなく、ブログの方針については、太く短くなのか細く長くなのかを決めることもなく始めてしまいましたので、一人称でそんな冒険をする度胸などなく現在に至ります。
『小生』…ああなんたる甘酸っぱい響き…。ワタシに相応の力が備わったら、是非とも『小生』としてもう一度やり直したいと思います。ここまで書いたことは半分以上ウソです。読んで信じた方、無駄な時間を過ごしてしまいましたね。

乙一さんの『小生物語』は、乙一さんが一人称を『小生』と名乗り綴ったWEB日記の書籍版です。世に出たのがもう20年くらいまえで、世に出てすぐに読んだのを覚えています。
日記を書いている『小生』は乙一さんであってかつ空想上の人物でもあり、日記の内容は乙一さんの身の周りに起こった出来事を綴っていて、かつ空想上の出来事も綴っています。読むともう本当に、夢か現か、リアルかホラーかファンタジーか、『ようこんな事思いつくなあ』という感想を抱きました。
『小生』と人称するからにはやはり全体としてこう、なんというか、文豪っぽいというか、ひと昔前っぽいというか、偉そうというか…しかし書かれている内容はなんか『小者』感があふれていて親しみを覚えることも多く、そのギャップに萌えます。このブログで初めて『萌え』なる表現を用いました。後悔はありません。

ワタシはとにかくこの本大好きです。電子書籍版がないのが残念でなりません。
ブログで日記書いてて、別に目指すべきものがあるとは思ってませんでしたが、『小生物語』を再読した今となっては、この『小生物語』こそこのブログの目指すべき形ではないかと思えます。別の本を読んだら考えが変わりますが、別の本を読むまでは真実なのでここに書いてみました。後悔はありません。