森博嗣『幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost?』感想

2021/1/16 読了。
前半はだらだらと読み進めてましたが、後半は一気読み。

バイオテクノロジーで人が死ななくなった未来で、主人公がリアルとバーチャルを行き来しながら事件に巻き込まれていく、WWシリーズの第4弾。

人間が死を克服し、リアルとバーチャルが対等に比較されるような世界では、「幽霊」とは一体どのような概念となるのでしょうか?
「死んで化けて出る」とは言いますが、いつまでも生き続けることができる世界でも、いつかは「化けて出る」ことができるのでしょうか?
など思いながら読みました。

「幽霊」って、その存在だけで読者を物語に繋ぎ止めるフックになると思うのですが、肝心の物語の登場人物たちがそこまで興味なさそう、というか大した謎だとは思っていなさそうです。読者(ワタシ)と登場人物たちの温度差が新鮮ですね。

生きた人間が世の中を上手く転がすためのツールとして古今東西語らる「幽霊」ですが、本作ではさらに「では『生きた人間』とは一体どのような存在か?」と言うところまで考えなさいよ、と言われているようでした。
現在とは価値観が異なる世界を描いている中で、主人公がリアルとバーチャルの違いに思いを馳せるのですが、その描写にやけにリアリティを感じましたね。

今回も大変面白く堪能させていただきました。
森博嗣さん、いつか辞めると言いながらどんどん新刊出してくれてますね。ファンとしては本当にありがたいですね。