TITLE:再会

ひょんなことから中学の同級生と再会した。
ここ数年一緒に仕事をしていた同僚が、共通の知人だった。出身地も年齢も違うのに、世間は狭い。ただ、その同級生は学生の頃から、世界中の誰とでも友達になれそうなやつだった。だから、どこかで「なるほどな」と思う部分もあった。
彼らはたまに2人で飲むらしい。知り合ったのは私の方がはやいものの、関係は彼らの方が深いのではないだろうか。
3人で飲み会をする事になった。場所は各々の家である。すなわちオンライン飲み会だ。私はこの形の飲み会は初めてだった。アルコールに助けられているとはいえ、モニタ越しの長時間のコミュニケーションははたして成り立つのか、という懸念があった。
杞憂であった。相手がコミュニケーションスキルに長けているということが大きいのだろう、私は相槌を打っているだけでも、話は思いの外転がっていった。最もよかったのは、当然のことではあるが、自分が欲しいだけの酒とつまみを買っておけば、それ以上の飲食を他人に強要されることがないということだった。もう全ての飲み会がモニタ越しなら良いのに、と思った。
多くの時間が、私と同級生の会話に割かれた。お互いのこと、お互いの家族のこと、共通の友人のこと、それから、他愛のない昔話。同僚は黙ってうなづくか、簡単な相槌をうつかだった。それはそれで楽しんでいるようにモニタ越しには見えたのは、私が思いの外酔っていたからだろうか。
終盤、同級生は、「もうさ、オレらも40だぜ」と言った。「そりゃあ歳もとった。酒にも弱くなった。…ああ、お前は元から弱いか」と。
他愛もない会話だが、私は少しショックを受けていた。人間歳を重ねることで弱くなる、という価値観を持ってそうにない人物からそのような発言があったこと。そして、「お前も一緒だぞ」というニュアンスで言われたこと。なにか反論のようなことを言おうかと思ったが、適切な言葉が出てくることはなく口元を斜めにするに止まった。
「今度は外で飲もう」と陽気な口調で言われた。「落ち着いてからな。オレがそっちに行くよ。また連絡する。いやあ、今日は久しぶりに会えてよかった」
「いつになるかわからないな。こんな状況では」と私は返しておく。「まあでも、楽しみにしておくよ」と言って接続を切った。

1人で飲みながら少し考える。次の具体的な約束はしなかったな。次会うのは果たしていつになるだろうか。若い時は、次の約束なんかしなくてもしょっちゅう会っていたものだが、若くなくなるとそう言うわけにもいかないかもしれない。感染症流行のせいではない。お互いの日常がオーバーラップする部分はもうゼロに等しいのだから、会うだけでも膨大なエネルギーが要る。そういったエネルギーこそ、年々弱くなっていくのだろうか。

かつて眩しく見えたものが、今はそれほどではない。輝きがなくなったのか、それとも私の目が悪くなったのか。
答えを出すことはできなかった。